進化した石川佳純、中国3選手を撃破!

 久しぶりに更新します。今後はちょっとしたメモ程度でも書いていければと思います。
 スウェーデンオープン。石川佳純が中国選手を2人撃破してベスト4に進出しました。ドイツオープンのウーヤン撃破に続き、この1ヶ月で中国選手に3勝。この突然の進化、覚醒はどこに理由があったのでしょうか。

 いや、これは突然などでありません。自分で書いておいて、自分で否定するというマッチポンプ。じっくり時間をかけて作り上げたニューかすみんの進化形です。
 この1年ほど、さかのぼればリオ五輪の前から、石川佳純はバックハンドの強化を目標に掲げ、実戦でもそれを見せてくれていました。
 高速でリズミカル、しかし悪く言えば当てるだけだったブロックのバックハンドを、振り切るバックハンドへ。
 バックでリズムを作り、得意のフォアハンドで決める得点パターンから、バックのラリーの中だけでも決められる、ウイニングショットとしてのバックドライブの磨き上げ。守りのバックハンドから、攻めのバックハンドへの改革です。

 しかし、これはそう簡単に身につくプレースタイルではありません。事実、石川佳純もあれこれと試行錯誤が見られました。
 ラケットを変えたり、ラバーを変えたり、大会によってはバックハンドにこだわりすぎて、本来の武器であるはずのフォアハンドを振る回数まで減ってしまった。
 10月のワールドカップで、長年のお得意先だったリホチンに負けてしまったのも、この副作用でしょう。バックハンドの強化・変革を試行錯誤するあまり、フォアハンドとのバランスを取り損なっていた。

 それがようやくここにきて、適切なバランスを見つけた、探し当てた、身につけた。随所で鋭いバックドライブを振り切りつつ、最大の武器のフォアの回り込みも活かす。
 スウェーデンオープンでの、リ・シャオダン李暁丹、グ・ユティン顧玉亭の連続撃破の試合は、この両ハンドの絶妙なバランスのプレースタイルを見せてくれました。
 石川佳純の快進撃は、突然の覚醒などではなく、先月のリホチン戦の敗戦も、とても意味のある負けだった。

 ただし、準決勝の丁寧戦はうまくいきませんでした。0-4のストレート負け。
 いいプレーも多数あり、これまでより差が詰まった印象を与えてはくれましたが、それまでの2戦に比べると、当てるだけのバックブロックが多くなっていた。
 この違いはおそらく、丁寧の能力・戦術によるものなのでしょう。石川佳純にバックを振らせない。バックをブロックにしか使わせない。
 バックのラリーの中で、瞬時にリズムを変えて緩急を入れてくる丁寧の技術の前では、まだ気持ちよくバックドライブを振り切るところまでは来ていなかった。

 素人が上から目線でわかったふうのことを書いている恐れは大いにありますが、私の目にはそう映りました。全然違うぞという人がいたら、ぜひご教授をお願いします。
 時間の余裕があれば詳細なスコアを掲載して、石川佳純の得点パターンの変化を検証してみたいのですが、それを言い出すとまた半年くらい更新が滞りそうなので。

 

平野美宇が丁寧を破った試合を分析してみた

 アジア選手権2017の女子シングルス、平野美宇の優勝については、世界中のメディアで語られています。当ブログでは特別に書くこともないだろうとサボっていたのですが、今まで平野美宇にこだわってきた卓球探偵が、この大会をスルーしてしまってはブログの存在意義がありません。
 今さらですが、丁寧戦の独自スコアを作成して、検証してみようと思います。

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 スコアの見方は当ブログの第1回にも書きました。数字の並びは得点経過を表し、数字は何球目で得点になったか(たとえば4球目をミスした場合は「3」とする)。これが奇数ならサーブ側の得点。
 B・M・Fは、相手コートのバックサイド、ミドル、フォアサイド、どこへの打球で得点になったかの目測。
 このほか、得点を決めたショットが、フォアハンドによるものか、バックハンドによるものか、ドライブかそれ以外かを記した表もあるのですが、これは割愛しました。

 順に見ていきます。
 第1ゲームは平野3-11丁寧。スロースターターっぷりを発揮して、いいところなく落とします。丁寧のミドルを狙った平野の打球にミスが多かった。

 第2ゲームの注目点は、0-5からの平野の得点に「B」がズラリと並んでいることです。丁寧のバックサイドへの打球が効果的に決まり、得点を重ねている。1ゲームのミドル狙いから、バック狙いに切り替えたことがわかります。
 なかでも目立っているのが「B1」。つまりサービスエースです。第2ゲームだけでサービスエースが4本。ロングもあれば、下回転か横回転もあり。
 このほか「B2」、2球目で決まった得点も3つあります。
 結局このセットは、平野の得点12点中、10点が丁寧のバックへの打球。そのうち7点が2球目以内の得点でした。

 第3ゲームになると、得点パターンがガラリと変わります。
 平野の得点11点中、4点がバックサイド、4点がミドル、3点がフォアサイド。多様にコースを打ち分けているのがわかります。
 印象に残ったのは丁寧のフォアを狙ったストレートのフォアドライブです。Fが太字で表示されているのは、フォアサイドへ決まった得点のうち、平野がフォアハンドで打ったショットです。
 この第3ゲーム、Fの3点はすべて太字です。つまり、平野のフォアストレートが丁寧のフォアを抜いた(あるいは丁寧が返球をミスした)得点が3本あったことになります。
 これで1ゲームを取り返し、ゲームカウント1-2になります。

 第4ゲームは、この試合を象徴する攻防が記録されています。他のセットとは異なる記号や数字の並びです。
 まず、フォアサイドへの得点「F」、それも太字の「F」がバンバン決まっています。平野の16点中、じつに8点が丁寧のフォアサイドへの打球。そのうち7点はストレートのフォアドライブです。

 球数にも注目してください。第3ゲームのFは3球目と4球目だけでしたが、第4ゲームのFは5球以上のラリーがほとんどです。
 この第4ゲームはとにかくラリーが多く続き、平野の得点16点中、12点が5球以上で決まっています。一方、丁寧の得点14点中、5球以上は4点です。
 ラリーになれば平野の優位。そのウイニングショットの多くは、丁寧のフォアを抜くフォアストレートでした。一番多かったのはサーブと3球目をバックサイドに打ち、5球目でフォアに決めるパターンです。
 高速ラリーの応酬の中、平野美宇がきゅっと身体をひねって丁寧のフォアサイドへ鋭い打球を打ち込むシーンが、映像としてよみがえってきます。

 第4ゲームのもう一つの特徴は、丁寧のミドルへ決めた得点が2点しかないことです。16点中、フォアサイドへ8点、バックサイドへ6点、ミドルが2点。
 左右のコーナーを突いた厳しい打球がほとんどで、左へ右へと、大きく丁寧を振り回しました。
 結果的にこのセットは、8-10と丁寧がマッチポイントを握り、それを平野がギリギリの瀬戸際でしのいで逆転。16-14で取り返すという経過でしたが、スコアの内訳を見ると、ラリーでの平野の圧倒的な優位や、明確な得点パターンの存在など、平野が丁寧を凌駕していった様が見て取れます。

 最終の第5ゲームは、ここまでの得点の取り方をあらためて全部出してみました、と言えそうな内容になっています。
 第3ゲームと第4ゲームでは計1本しかなかったサービスエースが、いきなり序盤に2本、終盤に1本。効くサーブを温存していたのか、新しいサーブを出したのか、素人には見抜けませんが、貴重なポイントを稼ぎます。
 逆に第3、第4ゲームで得点を重ねたフォアストレートは1本に減り、代わりに増えたのは、強烈なスピンのかかったバックドライブです。丁寧が平野のフォアハンドを嫌がってバックに集めた球に対し、ライジングのタイミングで高速バックドライブを打ち込みます。

 そして試合開始から56分。ついに女王陥落のときがやってきます。
 勝利を決めたラストショット。これも12球のラリーの末に平野美宇が放った、丁寧のフォアを襲うクロスのバックドライブでした。
 ハッピー・バースデイ・ウイン!


<おまけ/平野美宇の得点まとめ>
●第2ゲーム
・12点中、丁寧のバックサイドへの得点10点。
サービスエース4本。

●第3ゲーム
・11点中、丁寧のバックサイド4点、ミドル4点、フォアサイド3点。
・フォアサイド3点は、すべてストレートのフォアドライブ。

●第4ゲーム
・16点中、丁寧のフォアサイドへ8点。そのうちストレートのフォアドライブが7点。
・5球以上のラリーは、平野12点、丁寧4点。

●第5ゲーム
サービスエース3本。
・バックドライブの得点4点。

 ちなみに下のサイトにもこの試合のデータ分析が掲載されています。
Ding Ning – Miu Hirano: beating China, beating the odds

 両選手のショットの内訳など、興味深い内容満載ですが、よく読んでみると「最長ラリーは20球」など、誤った記述が見つかり(何度数えてもこの試合の最長ラリーは17球です)、正確性はあまりアテにできないのかも知れません。

*追記
 リンク先のサイト様からコメントをいただき、最長ラリーの箇所を訂正したとの連絡がありました。ネットは世界とすぐつながるから、すごいですね。

 

卓球世界ランク、キャッチフレーズ付き(女子)

4位 石川佳純 攻撃三球 気合肩露出
8位 伊藤美誠 前陣蝿叩 強気毛心臓
9位 平野美宇 言語天然 高速臍強打
18位 佐藤瞳  促進歓迎 大物喰守備
22位 早田ひな 右膝心配 日本的丁寧
23位 浜本由惟 長身豪打 談話不安定
24位 石垣優香 守備堅実 若手壁存在
27位 森薗美咲 佳純親友 電影出演望
30位 森さくら 叫声怪鳥 大阪的女子

 2017年3月の最新世界ランキングを、短評入りで紹介してみようと思い立ち、やってるうちに何故か漢字で統一したくなり、こんな感じになりました。
 まずい。選手の目に触れたら怒られそうなものが混じっているかも。一応、愛を込めて花束とともに付けたつもりではありますが。

 せっかくだから日本選手以外のトップテン・ランカーも付けてみました。こっちは一部、愛がないから、もっと怒られそう。

1位 丁寧  中身男性 座込初球怖 
2位 朱雨玲 超級首位 細目中国婦
3位 馮天薇 星国主力 最近髪型変 
4位 石川佳純 全農左腕 昔眼鏡可憐
5位 鄭怡静 小籠包国 男装台湾女
6位 ハンイン 角球得意 守備型独母 
7位 陳夢  朱同世代 写真稀美女
8位 伊藤美誠 広額全開 手首技器用 
9位 平野美宇 前髪大事 五輪落飛躍 
10位 杜凱栞 名前連呼 香港若手娘
10位 武楊  日本難敵 狐似守備人

 10位の杜凱栞(ド・ホイケム)は説明しないと意味がわかりません。得点した時にいつも「ホイ!」と声を出すから、なるほど、ホイケムさんは叫び声もホイなのかと、その印象が強いのです。

 

松平健太の微妙な判定とリオ五輪の石川佳純

 カタールオープン、松平健太戦のエッジorサイドの微妙な判定、というより誤審が話題になっています。勝負を決めた最後の1点だっただけに、これはあまりにも気の毒な、腹立たしい判定としか言いようがない。
 ただ、これで思い出したのはリオ五輪個人戦石川佳純vsキムソンイの試合です。

 あの試合、石川佳純が途中で足を痛め、メディカル・タイムアウトを求めたのに、審判に認められなかったという出来事がありました。

 この審判の判断については、どうこう言っても仕方ありませんが、あの時、海外のメディアの中に「なぜ石川のコーチは一緒に審判と話をしなかったのか。彼は英語ができなかったのだろうか。だとしたら不幸なことだ」という記事がありました。
 選手が足をさすりながら懸命にタイムアウトを求めているのに、なぜコーチは黙って見ていたのか? と、半分怒りを交えたニュアンスだったように読めました(ぼくのア・リトルな英語力なので確かではありません)。なるほど、海外からはそんなふうに見られていたのかと、新鮮に思ったものです。

 今回の松平健太の判定についても、同じことが言えるのかもしれない。
 あの判定の直後、選手自身は必死に抗議をしていました。でも、コーチはどうだったか。ITTFの映像からはコーチの挙動がわかりませんが、少なくとも強く抗議をしたようには見えない。勝負を分ける大事な大事な1点、しかもミスジャッジの可能性がある1点なのに。
 こんな場合に、コーチがどこまで出ていっていいのか、そもそもコーチの抗議が認められるのか、ぼく自身、ルールをよくわかってないのですが、それをさておくと。

 審判の判定を議論する場合、日本側のベンチの問題としてとらえる視点も持つべきではないか。コーチの語学力、もしくはその他の理由を問題にする意見もあっていいのではないか。
 リオデジャネイロで、足をさすりながらタイムアウトを求めた石川佳純の姿を思い出しながら、そんなふうに思いました。

みうみま大波小波の法則

 前々回、カタールオープンを取り上げたのですが、タイミングが早すぎました。丁寧(ディンニン)のエントリー取り消しにより、平野美宇は第8シードに繰り上がり。文章の意味も半分なくなってしまいました。
 これで第5から第7シードのハンインやウーヤン、伊藤美誠と早い段階で当たる可能性はなくなり、良かったのかも知れません。とはいえ、ノーシード組にも王曼昱(ワンマンユ)がいたりして、彼女のほうがよっぽど爆弾じゃないかという気もします。

 それと前々回の平野美宇の記事を書きながら、何か違和感が横切りました。大事なことを忘れているような、ゼッケンを付け忘れたまま試合に出てしまったような違和感。
 忘れ物の正体は、たぶん伊藤美誠です。
 みうみま研究家を自称する身としては、おぼろげな予感がする。順番からいくと、カタールオープンで暴れるのは美誠ちゃんなのではないだろうか、と。

 美宇が活躍すれば、次は美誠。美誠が先へ行けば、美宇が追いかける。ふたりはこうして成長してきました。大きな波と小さな波を繰り返しながら。

 これを「みうみま大波小波(おおなみこなみ)の法則」と呼びます。
 初めてのワールドツアー決勝進出は美宇が先。優勝は美誠が先。
 ブレイクスルースター賞は美誠が先に15年に受賞。美宇は次の年に受賞。
 五輪のメダルを先に取ったのは美誠。でも、ワールドカップの優勝トロフィーは美宇が先。

 伊藤美誠は先日の全日本選手権で、5回戦負けを喫しました。番狂わせと報じられた安藤みなみとの一戦です。
 完全に、相方の平野美宇に話題を独占されて、美誠ちゃんの影が薄くなってしまった。なかには「美宇に置いていかれた」などと、手のひら返すの早すぎな声も聞きました。

 いやいやいや、伊藤美誠を甘く見過ぎでしょう。
 昨年の世界ジュニアで見せた頼もしいほどの強さ。団体戦全勝で金メダルの原動力となった、無敵の神さま感。鋼にコンクリートを混ぜて固めたような、揺るぎないメンタル。
 一家に一台、美誠ちゃんロボットがあれば、たとえ東京湾からシン・ゴジラが襲ってきても美誠パンチで守ってくれそうな、そのくらいの頼もしさを感じたものです。

 そこで全日本で伊藤美誠が負けた試合、安藤みなみ戦をあらためて見返してみました。
 何がいけなかったのか、敗因は何だったのか。ドイツのカットマンじゃありませんよ。それはハンインです。
 当日の印象は、伊藤美誠が攻め急ぎすぎてペースを乱した。そしたら、安藤みなみが美誠の打球に慣れてきて、流れが変わった。そう受け取っていました。「相手が伊藤美誠のボールに慣れてきたのに、圧勝だった第1ゲームのペースに固執して負けてしまった」ことを敗因に挙げた記事もありました。

 しかし、これは違うのではないか。あらためて試合を見た感想は、逆です。安藤がペースに慣れたのではなく、ペースを合わせたのは伊藤美誠のほうだった。

 力の差がありすぎたゆえに第1ゲームを圧勝。これで一時的に集中を失い、第2ゲームの攻め急ぎから流れが変わったのは確かだとしても、その後はむしろ、伊藤美誠が慎重にプレーしていたのが見て取れる。
 この辺はリオ五輪のドイツ戦、大逆転負けの教訓があると思われます。第2ゲームの後半からは、慎重に、慎重にと、自分に言い聞かせるかのようなプレー。
 ところが、これが逆に相手を乗せてしまう。わずかにスローダウンしたプレーが、安藤みなみのリズムに合ってしまった。それまで速さについていけなかった安藤が、慎重になった美誠の打球にはぴったり合った。

 第4ゲーム以降は、伊藤美誠が凡ミスを連発。明らかな焦りが見られました。「なぜこんなに接戦になるの? 気を抜かずに、攻め急がずにプレーしているのに、なぜ1ゲームみたいにうまくいかないの?」という焦りでしょうか。
 第5ゲームはもう集中力がなかった。相手のサーヴを見送るだけでエースを取られるという、ひどい場面もあり、たちまち大差がつく。そこからようやく開き直り、本来のリズムに戻ったと思わせるプレーで追いつきますが、デュースで決めきれず。アンラッキーもあって12-14で落とす。これで実質、ジ・エンド。
 第6ゲームはミスを連発。打っても打っても入らない。自らタイムアウトを取るも、最後は7連続失点で6-11。ゲームオーバーとなりました。

 だから、あの敗戦はむしろ、伊藤美誠の成長を示すものです。いや、さすがにその言い方は無理がありますね。リオ五輪ゾルヤ戦の負け方とは違う。攻め急いだから負けたのではなく、攻め急いだことを反省しすぎてリズムを崩したから負けたのです。

 負けてしまったものは仕方がありません。挽回のチャンスはすぐにやってくる。「みうみま大波小波の法則」によれば、今度は美誠ちゃんの番です。

 世界上位ランカーが勢揃いするカタールオープン(2月21-26日)。中国選手も多数出場するこの大会で輝くのは、伊藤美誠なのではないか。そんな予感がします。

 

全日本卓球決勝の得点パターンとタオルタイム

 平野美宇を特集したNHK「アスリートの魂」を見たら、全日本選手権2017の決勝戦について追記したくなりました。というより、当ブログの第1回にこの試合のスコアを掲載して、その時いろいろとデータ集計をしたのですが、最初から数字の羅列を見せられても困るだろうなと、カットしたものがいくつかあります。今回それを載せてみます。

 まず石川佳純平野美宇の「球数別の得点」です。何球目で得点したか。
短=2球目以内
中=3球目から6球目
長=7球目以上
 こう定義してふたりの総得点を分類すると、次のようになります。

石川佳純 53点(短19 中30 長4)
平野美宇 62点(短19 中35 長8)

 各ゲームごとの推移については、前回の表でもわかりますから、今回は総得点を対象としました。
 2球目以内の得点は19対19で両者互角です。サーブレシーブからいきなり打っていく平野美宇のプレーが話題になりましたが、石川佳純はもともと勝負の早いタイプ。少ない球数の決着では、平野が上回っていたわけではない。
 これが3球目から6球目までの得点になると、30対35で平野が上。
 7球目以上の得点なら、4対8で平野のダブルスコアになります。ラリーが続けば平野美宇の優勢だったことが、数字でもわかります。

 続いて「ゾーン別の得点」です。相手のバックサイド、ミドルサイド、フォアサイド、どこへの打球で得点になったか。相手の立ち位置には関係なく、卓球台のゾーンでバックとミドルとフォアを分類しています。
 このデータは総得点で見るより、ゲームごと、それも各ゲームの前半と後半に分けて集計したほうが面白い。どのゲームも、前半と後半では得点パターンが大きく変わっていたからです。

 どこで前半と後半を区切るかというと
前半…両者の得点合計が12点まで。
後半…それ以降。
 こうしました。じっと表を見るうち、この前後で得点パターンが変わっていることが多いと感じたからです。
 説明するまでもなく、両者合計12点とは2回目のタオルタイムです。このポイントを区切りに得点パターンが変化するというのは、常識なのか、発見なのか、たまたまこの試合がそうだったのか、わかりませんが、よくありそうな現象という気もします。
     
1ゲーム   前半  後半  得点
石川佳純 1-2-2 1-0-0 6
平野美宇 5-1-1 1-2-1 11
2ゲーム
石川佳純   1-2-2 2-2-1 10
平野美宇   2-2-3 3-1-1 12
3ゲーム
石川佳純   2-1-4 2-2-0 11
平野美宇   2-1-1 2-1-0 8
4ゲーム
石川佳純   1-5-1 1-0-1 9
平野美宇   5-0-0 1-4-1 11
5ゲーム
石川佳純   1-0-3 1-3-2 11
平野美宇   3-2-2 0-1-0 9
6ゲーム
石川佳純   0-3-2 0-0-1 6
平野美宇   2-4-1 3-0-1 11
       B-M-F B-M-F

 1-2-2 とは相手のバック1点、ミドル2点、フォア2点という意味です。 B-M-F の順。相手のサーブミスによる得点はどこにも入れてません。
 平野は、第1ゲームの前半、石川のバックサイドに集めて得点を重ね(5-1-1)、後半はミドル中心に変わった(1-2-1)ことが推察できます。これと同じパターンが第4ゲームで、前半はバックに集め(5-0-0)、後半はミドル中心に変わっています(1-4-1)。
 逆にいうと、前半に石川のバックサイドへの打球が得点になったゲームは平野が取り、それが決まらなかった時は平野が苦戦している。

 一方の石川は、第1、第2ゲームを続けて落とした後、攻撃パターンを変え、3ゲームの前半では平野のフォアサイドを攻めています(2-1-4)。そして後半は一転、フォアサイドの得点なし(2-2-0)で、このゲームを奪取。平野が対応して、後半はフォアサイドが得点にならなくなったという面もあるでしょう。
 同じパターンは第5ゲームにも見られます。前半はフォアサイドの得点が多く(1-0-3)、後半はミドルの得点が多い(1-3-2)。石川が取った第2、第5ゲームは、どちらも前半のフォア攻めと、後半のミドル攻めが決まったセットとわかります。

   こんな話を今さら書いたところで、誰が興味を持つのか、誰も読んでないのではないかと不安になってきました。
 ぼく的には、両者の得点合計が12点、2回目のタオルタイムを境に得点パターンが変わるらしいと、わかっただけで収穫でした。今後の試合観戦はこのポイントに注目したいと思います。

 

第9シード平野美宇という爆弾inカタール

 水谷隼石川佳純平野美宇、伊藤美誠らが出場する卓球のカタールオープン(2月21-26日)がすごいメンバーですね。世界ランカー上位がほぼ勢揃いして、女子なら世界ランク16位の浜本由惟や19位の早田ひなが予選から出場しなくてはいけないという超ハイレベル。
 シードは16人。残りの選手(女子は約60人、男子は100人以上?)が予選リーグを戦い、16人が本戦に進出。計32人がトーナメントを戦います。

*女子シード選手*
1 DING Ning 丁寧
2 ZHU Yuling 朱雨玲
3 ISHIKAWA Kasumi 石川佳純
4 FENG Tianwei 馮天薇
5 CHENG I-Ching 鄭怡静
6 HAN Ying ハンイン
7 ITO Mima 伊藤美誠
8 WU Yang ウーヤン
9 HIRANO Miu 平野美宇
10 CHEN Meng 陳夢
11 HU Melek フ・メレク
12 TIE Yana 帖雅娜
13 JEON Jihee 田志希
14 DOO Hoi Kem 杜凱栞
15 SOLJA Petrissa ゾルヤ
16 SATO Hitomi 佐藤瞳

 最大の注目は平野美宇でしょう。全日本で見せたあの強さが今年はITTFツアーでも発揮されるのか。「中国人を倒したい」が実現するのか。
 優勝した昨年のワールドカップは中国選手が不参加だった。グランドファイナルは美宇ちゃんの調子が良くなかった。適度な日程で中国トップや世界トップと戦うのは、平野美宇覚醒後、初めてと思われます。

 カタールオープンのシード順を見ると、平野美宇は第9シードにいます。シードというのは8番目と9番目では大違い。第9シードの選手は2回戦(ベスト16)で早くも、自分より上位シードの選手と当たる確率が高い。
 ワールドカップと全日本のチャンピオン。対戦相手から見れば、本来はラスボスの位置に登場してもおかしくないモンスターが序盤のダンジョンで出て来るみたいなもので、ドローに仕掛けられる爆弾です。
 まあ、16シード以内の選手は全員実力者ですから、美宇ちゃんだけを爆弾扱いするのは「盛りすぎ」かも知れませんが、このところの快進撃はまさにブレイクスルー・スター&ブレイク・ストロング賞。上位シード選手との直近の対戦結果を並べてみました。漢字表記とカタカナ表記は気にしないでください。

平野美宇vs.上位シード選手、直近の試合】
1 丁寧……超級で0-3の完敗。
2 朱雨玲……超級で2-3の惜敗。
石川佳純……全日本決勝で4-2の勝利。
4 馮天薇……W杯とグランドファイナルで大接戦の2連勝。
5 鄭怡静……W杯決勝で4-0の完勝。
6 ハンイン……グランドファイナルで0-4の完敗。
7 伊藤美誠……国内試合を含めて16年1月から4連勝。
8 ウーヤン……対戦なし

 世界ランク3位の石川に勝利。4位のフォンに2連勝。5位のチャンに完勝。7位の美誠ちゃんに4連勝。この辺には負け知らず。
 世界1位の丁寧と6位のハンインには完敗も、2位の朱雨玲とは超級でフルゲーム。
 最近の結果だけを見るなら、現在の平野美宇の実力はこの中でも2、3番めを争う位置ではないかと推察できます。

 それとも、やっぱり盛りすぎなのかな。2回戦でハンインやウーヤンに当たったら、現実の厳しさを思い知らされそうな怖さもあります。
 シード選手が順当に1回戦を勝つとしたら、望みどおり平野美宇が2回戦で中国選手とぶつかる確率は8分の3。「中国人」とぶつかる確率なら8分の6もある。 

 さあ、次は中東カタールの地で、進化を遂げたスーパーサイヤ平野美宇の戦闘力を見せてもらいましょう。