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平野美宇vs石川佳純「2球目の攻防」

 こんにちは、ピンポン二郎です。卓球ブログを始めました。全日本選手権を観戦するうちに、じっとして居られなくなり、衝動に身を任せてみようと思い立ちました。
 どの程度の更新ができるか不安ですが、ゆるーい感じに続けられればいいなと思います。

 第1回は、女子シングルスの決勝、石川佳純平野美宇戦のスコア表を作ってみました。というのも、この試合のポイントは「2球目の攻防」にあったと思うからです。
 石川の出鼻をくじくかのような、平野の2球目フォア・フリック。これに対抗するかのように、試合中盤から飛び出した石川の2球目攻撃。それでも止まらない平野の2球目フリック・スマッシュ。
 この「2球目の攻防」を検証したい、名勝負を記録したいという欲求から、こんな表ができあがりました。

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 表が大きすぎましたね。スマホの人には見えないのかな。
 作るのが大変そうに見えるかもしれませんが、たいしたことありません。美宇ちゃんのヘソがちらっと見えたりすると、そっちに目が行ってしまい、何球目だったか数え損なったりしますが、試合の映像を2回も見れば作れます。


 第1ゲームを例に、表の見方を説明します。

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*スコアの見方*
・何球目で得点になったか……平野美宇の欄に、4-2-5-3とあるのは、1点目は4球目、2点目は2球目、3点目は5球目で決まり、得点になったことを表します。
 これが奇数ならサーブ側の得点、偶数ならレシーブ側の得点。「0」は相手のサーブミスによる得点です。5球目がアウトになれば、それは4球目の得点です。

・得点経過……どういう順番で得点が入ったか。平野4253の右上に「石川 1」とあるのは、平野が4点連続で先取した後、石川佳純が1点目を1球目で得点したことを表します。
 次の「平野6」は平野が得点(6球目)、次の「石川4」は石川が得点(4球目)したとわかります。「TO」はタイムアウトです。

・得点が決まった打球の方向……Fはフォア、Mはミドル、Bはバックです。平野に「B」が並んでいるのは、石川のバック側への打球で得点が決まったことを表します。
 相手選手の立ち位置は関係なく、卓球台におけるフォアサイド、ミドルサイド、バックサイドを、目測で判定しています。そのため、ミドルかフォアか微妙な打球もありますが、その辺は適当です。相手選手が右利きか左利きかによって、FMBは反対になります。


 やっと本題に入れます。
 この試合では平野美宇の、向かっていく卓球が話題を集めました。2015年11月のコーチ交代以来、急速に進化した「攻撃卓球」の完成形が今回の全日本で示され、その攻撃卓球の象徴的なプレーとして「2球目の強打」が注目された。
 序盤でいうと、1ゲームの平野の2点目、2ゲームの平野の5点目と10点目が、2球目攻撃の得点です。1ゲームの石川の1点目、2ゲームの石川の5点目の「1」は、平野の2球目攻撃のミスによる得点です。
 これほど積極的に、石川のサーブを強打していったわけです。

 ところが思い起こしてみると、平野美宇は全日本の大会を通じて、2球目攻撃を多用していたわけではありません。
 ぼくは平野美宇の試合を4回戦から見ていますが、石川佳純よりずっと甘いサーブを繰り出す対戦相手もいたのに、決勝ほどは打ってなかった。
 そうだとするならば、あの2球目攻撃は「平野美宇の攻撃卓球の象徴」というよりも、「石川佳純戦のために準備された戦術」として、とらえるべきではないか。これがぼくの意見です。

 石川佳純といえば、必殺の攻撃パターンは3球目攻撃です。昨年、2016年の全日本選手権でも両者は決勝を戦い、第1ゲームの1点目から、いきなり石川の3球目攻撃が炸裂しました。ビッグゲームになるほど、石川は序盤から3球目攻撃で先手を取ってきます。
(ここでいう3球目攻撃は、フォアハンドの強打を指すことにします。バックハンドで打っても3球目攻撃かもしれませんが、石川の代名詞はフォアハンドの3球目攻撃でしょう)

 では、その石川佳純の3球目攻撃への対策はどうするか。昨年の二の舞を演じないためにはどうすればいいか。
 シンプルな対策があります。2球目を打ってしまえばいい。先に2球目を打って出れば、3球目攻撃を防ぐ守りにもなります。
 攻撃は最大の防御なり。平野美宇がやったのは、これではないでしょうか。

 スコアを見てください。第1ゲーム前半の平野の得点には「B」が並び、石川のバック側に集中的に球を集めたことがわかります。これも石川にフォアハンドを強打させないための対策と見ていいでしょう。こうして平野は序盤を5-1でリードします。
 ここから石川が反撃を開始。1点差まで追いつきますが、そうすると今度は平野の得点に「F」が出てきます。卓球台の対角線を切るような、平野のバックサイドから石川のフォアサイドへの鋭角的なバッククロス・ドライブ!

 スコア表を作って気付いたのは、どのゲームも前半と後半で得点パターンがガラリと変わることです。
 第1ゲームのように、前半は平野の得点にBが並べば、後半はFかM。
 第2ゲームのように、前半に長いラリーの平野の得点が続けば、後半の平野の得点はほとんど3球目以内、というふうに。

 この調子で1ゲームずつ試合を追っていくと、長くなりすぎて促進ルールを宣告されそうなので、あとは「2球目」だけに絞って見ていきます。
 背筋がゾクゾクしたのは第5ゲームの攻防です。平野の3点目は、2球目攻撃からの4球目。8点目も2球目攻撃のフリック。その返球の鋭さに石川が苦笑いを浮かべ、平野が8-2と大きくリードした場面です。
 ところが開き直った石川が、ここから一気に流れを変えます。圧巻は7点目、回り込んだフォアハンド・スマッシュの2球目攻撃。続く8点目も2球目攻撃。
「そっちが2球目から打ってくるなら、こっちもお返しよ!」と言わんばかりの連続レシーブエース。「私は全農のお米を毎日食べてるんだからね!」と、スポンサーも納得させます。

 これで第5ゲームを奪い返した石川は、第6ゲームでも平野のサーブを狙っていきます。石川の3点目と6点目が、回り込んだフォアハンドの2球目攻撃です。
 しかし、この意地の6点目のショットが、旧女王の最後の得点でした。平野が8-6とリードした場面での石川のサーブ。これを平野が2球目で強打して9-6。この試合を象徴するような、とどめの一撃になりました。

 少々、強引に結論をまとめるなら、平野美宇の勝因は2球目攻撃を多用して、石川佳純の3球目攻撃を封じたことにある、と。
 石川佳純がこの決勝戦で決めた「フォアハンドの3球目攻撃」の得点は、合計2点でした。石川の53得点のうち、たったの2点……。第2ゲームの2点目と、第5ゲームの1点目だけです。

 記録がないのでわかりませんが、石川佳純が必殺技の「フォアハンド3球目攻撃」で1試合に2点しか取れなかったのは、かなりレアな出来事のはずです。
 平野美宇に圧倒された得点経過もさることながら、この内容も大事件だったのではないでしょうか。