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平野美宇が丁寧を破った試合を分析してみた

 アジア選手権2017の女子シングルス、平野美宇の優勝については、世界中のメディアで語られています。当ブログでは特別に書くこともないだろうとサボっていたのですが、今まで平野美宇にこだわってきた卓球探偵が、この大会をスルーしてしまってはブログの存在意義がありません。
 今さらですが、丁寧戦の独自スコアを作成して、検証してみようと思います。

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 スコアの見方は当ブログの第1回にも書きました。数字の並びは得点経過を表し、数字は何球目で得点になったか(たとえば4球目をミスした場合は「3」とする)。これが奇数ならサーブ側の得点。
 B・M・Fは、相手コートのバックサイド、ミドル、フォアサイド、どこへの打球で得点になったかの目測。
 このほか、得点を決めたショットが、フォアハンドによるものか、バックハンドによるものか、ドライブかそれ以外かを記した表もあるのですが、これは割愛しました。

 順に見ていきます。
 第1ゲームは平野3-11丁寧。スロースターターっぷりを発揮して、いいところなく落とします。丁寧のミドルを狙った平野の打球にミスが多かった。

 第2ゲームの注目点は、0-5からの平野の得点に「B」がズラリと並んでいることです。丁寧のバックサイドへの打球が効果的に決まり、得点を重ねている。1ゲームのミドル狙いから、バック狙いに切り替えたことがわかります。
 なかでも目立っているのが「B1」。つまりサービスエースです。第2ゲームだけでサービスエースが4本。ロングもあれば、下回転か横回転もあり。
 このほか「B2」、2球目で決まった得点も3つあります。
 結局このセットは、平野の得点12点中、10点が丁寧のバックへの打球。そのうち7点が2球目以内の得点でした。

 第3ゲームになると、得点パターンがガラリと変わります。
 平野の得点11点中、4点がバックサイド、4点がミドル、3点がフォアサイド。多様にコースを打ち分けているのがわかります。
 印象に残ったのは丁寧のフォアを狙ったストレートのフォアドライブです。Fが太字で表示されているのは、フォアサイドへ決まった得点のうち、平野がフォアハンドで打ったショットです。
 この第3ゲーム、Fの3点はすべて太字です。つまり、平野のフォアストレートが丁寧のフォアを抜いた(あるいは丁寧が返球をミスした)得点が3本あったことになります。
 これで1ゲームを取り返し、ゲームカウント1-2になります。

 第4ゲームは、この試合を象徴する攻防が記録されています。他のセットとは異なる記号や数字の並びです。
 まず、フォアサイドへの得点「F」、それも太字の「F」がバンバン決まっています。平野の16点中、じつに8点が丁寧のフォアサイドへの打球。そのうち7点はストレートのフォアドライブです。

 球数にも注目してください。第3ゲームのFは3球目と4球目だけでしたが、第4ゲームのFは5球以上のラリーがほとんどです。
 この第4ゲームはとにかくラリーが多く続き、平野の得点16点中、12点が5球以上で決まっています。一方、丁寧の得点14点中、5球以上は4点です。
 ラリーになれば平野の優位。そのウイニングショットの多くは、丁寧のフォアを抜くフォアストレートでした。一番多かったのはサーブと3球目をバックサイドに打ち、5球目でフォアに決めるパターンです。
 高速ラリーの応酬の中、平野美宇がきゅっと身体をひねって丁寧のフォアサイドへ鋭い打球を打ち込むシーンが、映像としてよみがえってきます。

 第4ゲームのもう一つの特徴は、丁寧のミドルへ決めた得点が2点しかないことです。16点中、フォアサイドへ8点、バックサイドへ6点、ミドルが2点。
 左右のコーナーを突いた厳しい打球がほとんどで、左へ右へと、大きく丁寧を振り回しました。
 結果的にこのセットは、8-10と丁寧がマッチポイントを握り、それを平野がギリギリの瀬戸際でしのいで逆転。16-14で取り返すという経過でしたが、スコアの内訳を見ると、ラリーでの平野の圧倒的な優位や、明確な得点パターンの存在など、平野が丁寧を凌駕していった様が見て取れます。

 最終の第5ゲームは、ここまでの得点の取り方をあらためて全部出してみました、と言えそうな内容になっています。
 第3ゲームと第4ゲームでは計1本しかなかったサービスエースが、いきなり序盤に2本、終盤に1本。効くサーブを温存していたのか、新しいサーブを出したのか、素人には見抜けませんが、貴重なポイントを稼ぎます。
 逆に第3、第4ゲームで得点を重ねたフォアストレートは1本に減り、代わりに増えたのは、強烈なスピンのかかったバックドライブです。丁寧が平野のフォアハンドを嫌がってバックに集めた球に対し、ライジングのタイミングで高速バックドライブを打ち込みます。

 そして試合開始から56分。ついに女王陥落のときがやってきます。
 勝利を決めたラストショット。これも12球のラリーの末に平野美宇が放った、丁寧のフォアを襲うクロスのバックドライブでした。
 ハッピー・バースデイ・ウイン!


<おまけ/平野美宇の得点まとめ>
●第2ゲーム
・12点中、丁寧のバックサイドへの得点10点。
サービスエース4本。

●第3ゲーム
・11点中、丁寧のバックサイド4点、ミドル4点、フォアサイド3点。
・フォアサイド3点は、すべてストレートのフォアドライブ。

●第4ゲーム
・16点中、丁寧のフォアサイドへ8点。そのうちストレートのフォアドライブが7点。
・5球以上のラリーは、平野12点、丁寧4点。

●第5ゲーム
サービスエース3本。
・バックドライブの得点4点。

 ちなみに下のサイトにもこの試合のデータ分析が掲載されています。
Ding Ning – Miu Hirano: beating China, beating the odds

 両選手のショットの内訳など、興味深い内容満載ですが、よく読んでみると「最長ラリーは20球」など、誤った記述が見つかり(何度数えてもこの試合の最長ラリーは17球です)、正確性はあまりアテにできないのかも知れません。

*追記
 リンク先のサイト様からコメントをいただき、最長ラリーの箇所を訂正したとの連絡がありました。ネットは世界とすぐつながるから、すごいですね。